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    Missing half 11


     ……もっていかれる
     この感覚、知ってる
     冷たくなったアッシュの身体を抱いて、星の地殻へ降りていった、あの時の……



     ……、……!
     


     誰かが俺を呼んでいる。
     その声を頼りに、流されまいと必死で意識を繋ぎ止めた。

     
     ──俺にできるのはここまでだ。後は、お前が──


     次に目を開けた時、俺はアッシュの腕の中にいた。
     つーか、俺が意識のないアッシュの身体を支えていた。
    「アッシュ!」
     アッシュから俺へと流れ込んでくるフォニムを感じる。強烈な不安に襲われた。俺を譜陣の中核に受け容れたせいで、きっとアッシュに負担をかけすぎたんだ。
     一瞬、世界がゆれた。
     動揺してパニックになりかけた俺の気の乱れに反応して、セブンスフォニムが揺らぐのがわかった。

     死んでない。アッシュはまだ死んじゃいない。
     しっかりしないと。俺がしっかりしないとアッシュにまた負担をかけてしまう。
     本当にアッシュが死んでしまう。



     ──目を閉じて
        流れるフォニムの音を身体中で聞くのよ──



     ティアの言葉を思い出しながら、深呼吸する。
     体の芯から皮膚から髪の先まで。感覚器の全てが研ぎ澄まされ、震え立つような強い律動に合わせて、全身のフォンスロットが開いていくのが感じられた。

     フォニムの流れの全貌を見渡して俺にわかったのは、アッシュは天才だってことだ。
     宝珠の持つフォニムの拡散作用を無効化しながら、自然に拡散しようとする俺のフォニムをローレライの剣の力を借りて引き寄せ定着させる。アッシュはその二つのフォニムの流れを無意識のうちに完璧にコントロールしていた。俺はといえば、レムの塔では、剣の力でセブンスフォニムを集めることはできても宝珠の力を抑えることはできなかったし、外殻大地を降ろす時だって力が足りなくてアッシュの力を借りている始末だ。
     今のところ音素は安定している。でも。この譜陣はアッシュのフォニムで維持されているんだ。アッシュのフォニムが尽きた時が俺たちの……

     ひやりとみぞおちが冷たくなった。アッシュの蒼白い顔が目にうつる。
     まさか、アッシュ、お前──

     ドクンと胸に痛みが走り抜けた。体が、心が、フォニムが震える。落ち着け。気を乱すんじゃない。ある事実に気づいた俺は、死に物狂いで、心の動揺を鎮めようとアッシュの身体を強く掻きいだいた。

     アッシュのフォニムが尽きた時、消えるのは「俺たち」じゃない。
     アッシュだけだ。
     ローレライとの契約は「俺の存在を保つこと」だ。
     このままいけば先に使い果たされるのはアッシュのフォニム。アッシュが存在しなくなれば、俺のフォニム流出はおそらく止まる。俺だけが生き残ることになる。
     アッシュが自分でローレライとの契約を解除しない限り、この結末は変えられない。

     怒鳴り出したい俺の激情に感応して、世界が震える。
     だめだ、我慢するんだ。ここで泣き叫んでも何も変わらない。変わらないどころか。
     フォニムを暴走させでもしたらアッシュの命を削るだけだ。

     感情を押し殺しながら、絶望的な気分で俺は考えた。
     考えろ、考えろ。なにか方法はないのか?
     アッシュが維持している譜陣を俺自身が担えばいいのか? いや、俺のフォニムを使えばそれを補おうとしてかえってアッシュに負担をかけることになる。俺が力を貸したとしても、恐らく、アッシュのフォニムの消失を遅らせることはできても消失自体を止めることはできない。
     俺がアッシュの譜陣に頼らなくとも自分のフォニムをコントロールできるようになればいいのか?
     懸命に自分のフォニムを集めようとじたばたしてみたけれど雲をつかむような感じだった。俺という存在から流れ出ようとするフォニムの流れを止めることも、フォニムを逆流させることも俺自身の力だけではできなかった。たぶん自分で心臓の鼓動を自由にできないのと同じで、自然の理に反するってことなんだろう。ちくしょう、そんな道理は俺の知ったことじゃない。止まれよ! 俺のフォニムだったら俺のいうことをきけよ、馬鹿野郎!


     どうすることもできないのかよ。
     俺には、どうすることも──



     光輝くフォニムの波が、滲んで次第にぼやけていく。



     今の俺にできることといったら、剣で傷ついたアッシュの身体を癒すことくらいだった。俺の気持ちなんかお構いなしに、アッシュのフォニムを費やしながら俺の中を満たし続けるフォニムの流れを追っているうちに、俺はだんだんと悲しくなってきた。感情に蓋をするのも限界だった。
     俺には何もできなくて。何もできないまま、俺はアッシュが消えていくのを見ているしかないのか? 二度も、俺はアッシュが死んでいく姿を見なくちゃならないのか?
     嫌だ。それだけは絶対に嫌だ───


     俺の嘆きに応えるように。
     セブンスフォニムの海から、一つの音が響いた。






     あきらめちゃいけませんよ、ルーク






     イオン?
     そこにいるのか、お前?






     第7音素の海が震える。頭上にうねる波間から光が射し込んでくる。
     光の粒子は波となり、音となって、透き通った蒼白い虚空へと広がっていった。





     
     ……トゥエ レィ ズェ クロア リュオ トゥエ ズェ

     クロア リゥオ ズェ トゥエ リュオ レィ ネゥ リュオ ズェ……






     ティア──



     ティアの歌声に耳を傾けるうちに、乱れて挫けかかっていた心が鎮まっていく。
     アッシュの身体を抱きながら、俺は一つの決意をしていた。
     
     俺にできるか? 劣化したレプリカの俺にそれだけの力があるか? 
     いや、できるかできないかじゃない。
     絶対にやるんだ。

     全身のフォンスロットを全開にして、俺という存在を一本の投槍となして。
     遠く、遠く、遠く、力の続く限り──
     遠く遥かなる音譜帯へと。俺と同じ音を求めて、俺は意識を天空へと投げ飛ばした。



     ──聞こえているか、ローレライ



     応答があった。



     ──ルーク、そなたの願いは理解している
      アッシュとの契約を解くことはできぬが
      私の力の及ぶ限り、そなた自身の望みを聞き届けることはできるだろう



     俺は、願いを言った。
     ローレライが余裕をかましてる気がしたけど、たぶん気のせいじゃないだろう。俺の考えそうなお願いなんて、完全同位体のローレライにはきっと端からお見通しだったにちがいない。
     ローレライが微笑んだ。
     


     ──契約は成立した
      ルークよ、アッシュよ、愛しい我が同胞《はらから》よ




      そなたたちの幸運を祈っている





     
     ドンッと。鍵をめがけて天から落雷のように落ちてくるフォニムの瀑布。
     輝く光の柱の滝に貫かれる。


     ローレライの鍵を中心に、アッシュの譜陣と鏡面を成すように二つ目の譜陣が現れた。
     総毛立つ。身の内から痺れるような強烈な震えが沸き上がってくる。全身のフォンスロットが燃えるように熱かった。
     こいつをどうにかできるのは俺しかいない。失敗は許されない。
     甘えは捨てろ。迷うな。失敗なんて考えちゃいけない。
     アッシュを守る譜陣。
     必ず制御しきってみせる。

     挑戦的なアッシュの言葉が胸によみがえった。


     ──俺のレプリカなら、俺と対等以上だと証明してみせろ──


     証明してやる。
     そして、戻ったら。
     お前にたっぷりと文句を言って聞かせてやるんだからな、アッシュ。


     鍵を回す。
     爆発するフォニムの光。鏡となった譜陣から双方向に光の柱が立ち昇り、互いに螺旋状に絡み合い、互いの中心を貫いて一つとなる。
     フォニムの奔流に押し流されそうになりながら、必死に耐える。
     この世界は壊させない。フォニムも暴走させない。俺一人で支えきってみせる。俺は──



     ──まただ。あと少しが、足りな……



     誰かの力強い腕が支えるように俺の背に回された。鍵をつかむ手に別の手が添えられる。
     俺を押し潰しかけてた重荷が取りさられ、暴風のように俺の意志を圧迫していたフォニムの力が凪いでいくのがわかった。
     安定した──
     俺とアッシュの間にあるフォニムの流れは、今は自然な息吹となって俺たち二人の間を巡りはじめていた。

     振り向けば、一対の翡翠の瞳が怒ったように俺の目をのぞきこんでいた。



    「誰が一人で抱え込めと言った、この馬鹿が」



     その声も顔も目一杯不機嫌そうで。
     やっぱりアッシュはこうでなくちゃなと、安心して、幸せな気分が胸一杯に広がって。
     俺は───










     身体が、温かくて柔らかいものに包まれていた。


     ────雨?

     頬に落ちてきた水滴を感じて、目を開けると。
     涙にぬれたアイスブルーの瞳があった。
     ミュウみたいだな。そんなに泣いたら目玉が溶けちまうぜ、ティア。

     俺としては今さら感いっぱいで、照れくさいんだけど。
     やっぱり言わなくちゃなんねーんだろうなァと観念して、俺は言った。



    「ただいま、ティア」



     落ちてきた髪がくすぐったい。
     いきなり、唇に柔らかいものが押し当てられた。
     これって……


     アッシュ! これって!?



     返事はなかった。



     俺に覆いかぶさって泣きながらしがみついてるティアの後ろに、苦笑しながらこめかみを押さえるジェイドと引きつり笑いを浮かべて固まってるガイの姿がみえた。脇腹を圧してくる毛玉の感じはきっとミュウだ。
     おい、アッシュ! 逃げんじゃねえ!
     このややこしい状況を俺にどうしろってんだよ! 出てこいよアッシュッ!

     ティアの肩越しに見上げた空は、レムの塔で見たとき以上に蒼く高く透き通ってみえた。





    「おかえりなさい、ルーク」






     こうして、俺はなんとかオールドラントへの帰還を果たした。
     なんだかいまいち締まらないし格好悪いんだけど。
     俺なんだから。


     仕方ないだろう?




     ──第2部 完──

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