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    Missing half 3



     翌日の早朝。
     俺とガイは、キムラスカとマルクトの兵20名と共に村を出た。


     出立の前。
     ヴァンの妹から強引に薬袋を押しつけられたのは許容範囲内の行動だったが、道具袋に忍び込もうとしたチーグルは引きずり出して断固拒否した。キラキラうるうるしても俺には無駄だ。あまりあいつに同調したくはないが、コイツがうざいというのには、俺も全くもって同感だった。
     騒ぎ立てるチーグルはガイの方に押しつけてやった。

    「ボクは、きっとご主人様とアッシュさんのお役に立ちますの!」
    「足手まといだ」
    「そう邪険にするなよ。今までも、ミュウは結構役に立ってたんだぜ」
    「なら、お前が面倒をみるんだな。俺は知らん」





     荷物は、背嚢がひとつに剣が二振り。
     ガイから渡されたオートクレールと、ローレライの剣だ。一振りだけにするか迷ったが、結局は二本とも持っていくことにした。使ってみるとオートクレールは長年使い込んだ自分の剣のように手に馴染んだ。……いい剣だった。戦いの場にあっては、得物の良し悪し、髪の毛一本分の差が命運を分けることもある。

     ガイとの遣り取りを思い起こしながら、俺はルークの剣をとった。
     あいつから剣を借りるのはこれで2度目だ。
     ローレライの剣と交換した時にあいつから借りた奴のとっておき、『ソウルクラッシュ』は、今はエルドラントの廃墟の中に埋もれていることだろう。
     
    (俺が使っていいのか? これはお前のと揃いの剣だったはずだ)
    (──そうか、お前にはルークの記憶があるんだったな。構わないさ。こいつは確かにルークの剣だが、ルークもお前になら貸してもいいと言うだろうしな。俺にはこれ以上お前に合った剣は見つけてやれない。ディンの店での特注品だ。両刃で、ルークとお前の体格はほぼ同じだから、使い勝手はそんなに悪くないはずだ)

     確かにこれ以上の剣は、特注しない限り見つからないだろう。
     剣の釣合は、俺に合わせて作られたかのように完璧だった。





     集落を出て、いくらも経たず。
     ときおり出現する魔物を退けながら進むうちに、俺はあまり嬉しくない事実に気づくこととなった。

    「──妙だな」
    「何がだ?」

     数体の魔物を切り伏せた後、剣を拭いながらガイが呑気な視線を向けてきた。
     平然としたガイの顔に、異常を感じている様子はない。
     剣を振って白く濁った体液を振り落としながら、俺は地上に散らばった魔物の肉片に目を注いだ。

     セルレア。南ルグニカ平野には、棲息しているはずのない魔物だ。

    「ここらの魔物はこれほど強くはなかったはずだ」
     部隊の兵たちにも動揺は見られない。恐らくは、今ではこれが普通の状態なのだろう。俺の抱いた疑問に対して淡々とした答えが返ってきた。

    「お前の知っている、外殻大地降下以前の世界とは、状況がいろいろ違ってきていてな。……二年前の瘴気が原因で、魔物の棲息地が大きく変わってしまったんだ。瘴気は今でも時たま局所的に地表に出てくることがある。どうも、ジェイドの話では、瘴気の濃かった場所では魔物が移動したり弱い奴が淘汰されたり、酷い所では突然変異が現れたりもしているらしい」
    「さっきのはレムの塔辺りをうろついていた奴じゃないか」
     ガイは頷いた。
    「やっかいなことに、あれ以来キュビ半島から魔物が流れてきてるようなんだ。半島の一部と大陸の南端が繋がってしまったからな」

     それで2個小隊分の戦力か。
     戦時でもなし、集落の周辺を見回るだけの話としては多すぎると思っていたが……
     キムラスカの剣士とマルクトの譜術剣士が各々10人という人数もそれなら分かる。
     ちなみに、俺は哨戒に同行はしていたが、兵士ではないために、軍属として命令系統からは外されていた。
     ダアトの元特務師団長の肩書きはここでは何の意味もなさない。

    「腕の立つ兵が揃っているようだな」
    「ここに駐屯している兵士のなかじゃ最強の面子だろう」

     駆け寄ってきたマルクトとキムラスカの小隊長に、ガイが休息を告げる。
     ──ふいに。俺の方に敬礼してきた、彼らの視線を感じた。やけに嬉しそうだ。
     ガイは俺のことをどう説明しているのか。俺がファブレだと知っているならキムラスカ兵の方は分かるが、マルクト兵の反応は説明がつかない。ファブレの名はマルクトに対してはむしろ逆効果だろう。
     負傷者なしとガイに被害報告をすると、明るい表情で二人の隊長は隊列へと戻っていった。
     生きて帰るのも任務のうち。ヤバイと思ったら即逃げるんだけどなと、彼らを見送りながらガイは俺に笑顔をみせた。

    「実戦感覚も鈍っちゃいないようだ。お前が来てくれて助かったよ。魔物をかわすのも近頃は厳しくなってきてたんだ」
     お前のおかげで兵らの士気も高いしなというガイの言葉に、俺は妙な気がした。

    「キムラスカはともかく、なぜマルクト兵が?」
     少し驚いた顔で、ガイは俺の方を見た。
    「そりゃあ、瘴気を消して世界を救った伝説の英雄と一緒に戦えるとなれば、光栄に思うんじゃないのか? ルークだけじゃない。キムラスカではお前はランバルディア至宝勲章を授与された勇者だと子供でも知っているし、勲章こそないがマルクトでもそうだ。ピオニー陛下が、お前たちの功績を称える前代未聞の盛大な式典を執り行ったからな」
    「瘴気を消したのは俺じゃない。あいつだろう」

     ガイは深くため息をつくと、頼むよと言いたげな視線を俺に向けてきた。

    「お前までルークみたいな事を言い出すのか。──いいか。ルークと俺たちは、事実をありのままに両国の王に伝えた。瘴気を消滅させたのは、ルークとお前の二人だって事をな。ルークだけじゃ、あの時ローレライの剣と宝珠を完全に制御できなかっただろう。外殻大地を降下させたときもお前が力を貸してくれたと、そうルークは言っていた」
     海の色をした瞳が、俺を見ていた。

     隠しても無駄だぜ。
     俺たちは、お前にとっては仲間じゃなかったかもしれないが……望んだ世界と目的は同じだった。
     お前が何をしてきたか、誰が知らなくとも俺たちにはちゃんと分かっている。


     風が過ぎる。
     ガイは俺から目をそらして空を見上げた。

     ──いいかげん認めてもいいんじゃないのか。
     命をかけて世界を救ったのは、ルークとお前の二人だってことをさ。
     そして俺たちは、
     お前たちがどう思っていようとも……


     ガイの声はひどく優しかった。


     「俺たちは」それを忘れてはいないんだよ、アッシュ。









     俺たちの立つ小高い丘の上からは、茫々と草地の広がる南ルグニカ平野の一角が見渡せた。
     かつて怒涛のような戦馬の足音、兵士らの絶叫と悲鳴、剣戟の音に満ちていた大地は、まるで眠っているかのように沈黙し、穏やかな太陽の光に包まれていた。


     ほらよと、ガイが投げてきた水袋を反射的に受け取る。
     水を飲みながら近づいてくると、ガイは俺と同じく眼下に広がる景色を見渡した。
     

    「静かなもんだろ。時代が変われば土地も変わるものだな」
    「レプリカの国を作るのに、この土地を選んだ理由は分かるが……」

     レプリカの集落は南ルグニカ平野の南部に位置していた。この一帯はキムラスカとマルクトの国境で、昔から二つの国の間で戦が絶えなかった場所だ。旧時代には肥沃だったと言われる大地は、度重なる戦で人の住みにくい荒野となっていたが、元から悪い土地だったわけではない。手をかければ人が住めるだけの地力を取り戻す余地は十分にありそうだった。

     誰からも見捨てられたかに見えるこの辺境の地は、レプリカの国を作る土地としてはうってつけの場所だったのだろう。

     駐留軍以外は人のいない国境地帯で、レプリカ達が集まっていたレムの塔からも近く、カイツールの軍港から人や物資の輸送もできる。アクゼリュスが消滅したことで、触手を伸ばしたくなるような資源もなくなった。魔物の心配はあるが、見方を変えれば魔物の出現は兵を出す口実にも使える。大陸崩落前には国境を徘徊していた盗賊の姿は今は見えない。……それにコーラル城も近い。レプリカ専用施設を作る必要があるなら、一から作るより施設の跡地を利用した方が効率的だ。。
     考えたくはないが、万一レプリカとの間に問題が起きたとしても、カイツールの砦とフーブラス川と海とが、オリジナルとレプリカ双方を守る、互いに距離を置く緩衝材となるだろう。レプリカの居住地を決める際に、荒廃して当面は価値のないように見えるこの土地だけが、レプリカに対して否定的な、レプリカを脅威と考える連中を納得させるだけの材料を満たせたのかもしれなかった。

     ガイがどこか楽しげな奇妙な表情で俺を見ていた。

    「そんな風に裏事情を考えはじめるのはお前らしいな」
    「ふん。あいにくとそんな人が良くはできてないんでな」

     思案深げなガイの顔に、あいつと比べられているのがなんとなく分かった。
     ガイが俺よりあいつを選んで心を許したのは、人を疑うことを知らないあのどうしようもなく馬鹿で裏表のない性質を愛したんだろう。
     いまさらの事だ。
     あいつのように疑いなく世界を見ることは俺にはできない。俺の性質の内には純粋無垢などという単語は存在しないし、素直に国や人を信じるには、俺はあまりにも多く世の中の汚い側面を見過ぎていた。 







    「そいや、お前に頼みがあるんだが」 


     短い休息が終わって立ち上がると。
     思いだしたようにガイは俺に水色の毛玉を投げてよこした。
     条件反射で受け取りそうになり……寸前で、俺は体をかわした。
     地面に顔面衝突するチーグル。毛玉は俺の足元で目を回していた。

    「みゅううう……い、痛いですのー……」

     俺はガイを睨みつけた。
     一見他意のない笑顔でいるが、こういう時のこいつは下心ありまくりなのを俺は知っていた。

    「なんだコレは」
    「俺が面倒見てたけどなァ。やっぱ一応今はここの指揮官だし威厳がつかなくて。ついてきちまったのを置いてくわけにもいかないしな。悪いけど帰るまでミュウのこと頼むわ」
    「待て! なんでこの俺が!」
    「よろしくお願いしますの☆」
    「黙れチーグル!」



     確信犯だろうお前。



     俺を無視するとはいい度胸だ。
     俺の方を振り向きもせずに肩を震わせるガイの背中を、俺は睨んだ。
     チーグルの方といえば、俺の怒りなど全く意に介さず、嬉しげに俺の後をついてきやがった。
     機嫌よさげに耳を揺らすチーグルを蹴り飛ばして踏みにじりたくなる、その荒っぽい衝動を、俺はやっとの思いで抑え込んだ。
     ……腹立たしさに腸が煮えくり返るようだが、コレを蹴っていいのはあいつだけだ。
     俺はこいつの主人じゃない。
     一声唸ると俺は言い捨てた。


    「……仕方ない。いいか、絶対に無駄口を叩くな。黙ってついて来ねェと叩っ切るからな」
    「はいですの!」
    「……足手まといだけにはなるなよ」
    「大丈夫ですの!」
    「ったく。誰に似たんだか、返事だけは威勢がいいな」


     全く大丈夫でないことは、予想を違えずに割とすぐに判明した。
     主人が主人ならチーグルもチーグルだ。



     ──翌日。

     渓谷を流れる河沿いに移動していた部隊は、魔獣の一群に襲われて乱戦状態に陥った。
     足場を移して戦ううちにいつしかガイとも分かれ、切れ目なく襲いかかってくる魔物を何体か切り伏せた直後のこと。
     俺はチーグルの悲鳴を聞いた。


    「みゅうぅッ!」

     
     魔獣に突き飛ばされる小さな体。
     飛ばされた勢いで、金色のリングが外れて飛んでいく。


     切り立った岩の見え隠れする河の奔流に、水色の塊が落ちていくのがやけにはっきりと見えた。


     ──確か、奴は泳げなかったはずだ──



    「チーグル!」



     とっさに地を蹴り、水色の毛玉を掴まえると左腕に抱え込む。
     剣を捨て、ソーサラーリングをつかむ。
     勢いがついた、しかも両腕が塞がった状態で重心を岸へと戻すのはさすがに無理があった。
     両腕にチーグルを強く抱きしめると、やがて来る衝撃に備える。

     迫ってくる水面。 
     バランスを失った俺の体はチーグルもろともに激しい流れの中へと落下していった。





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