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    空輝く日を待ちながら(後編)

                        
     血盟城を出てほどなく降り始めた雨の中。
     眞王廟へと続く森を抜ける道を、騎馬で進む二人の少年の姿があった。

     大賢者を濡れ鼠にするのも忍びず雨宿りを提案したヴォルフラムだったが、眼鏡にかかる水滴を拭いながら空を見上げると、双黒の少年は気怠げに首を横に振った。

    「雲の具合からすると、雨が止むまでには暫く時間がかかりそうだ。どしゃ降りってほどでもないし、暗くなる前に眞王廟へ着くつもりなら、君さえ良ければこのまま進んだ方がいいと思う」
    「……わかった。それじゃ、なるべく急いで行くことにしよう」

     金髪美少年のそっけない返事に、へらりと困ったような笑顔が返されてきた。

    「それが……休む間もなく大急ぎで来たもんだから、少し疲れちゃってて。駆足はできそうにないんだ。並足で進んでも構わないかな」

     ──やっぱり、有無をいわせずに血盟城で一晩休ませるべきだった……

     だから言っただろう!と小言を言いたいのをぐっと堪えると、ヴォルフラムは声を抑えて答えた。我ながらずいぶん大人になったものだと心の片隅で思う。

    「よし、ならば猊下が先に進んでくれ。僕は後をついていくから」
    「ごめん。付き合わせちゃって悪いね」
    「気にするな。これくらいの雨は行軍で慣れているし、どうってことはない。僕は護衛としてお前に同行しているんだからな。それが僕の務めだ」
    「うん……ありがとう、フォンビーレフェルト卿」


     しとしとと、雨が。
     かぽかぽと、蹄の音だけが聞こえる森の道を、ゆっくりと馬は進んでいった。


     馬に揺られて雨にぐっしょりと濡れる小柄な背中を見つめながら、ヴォルフラムの胸中には、形にならない何とも説明のしようのない想いが渦巻いていた。
     正直なところ、ユーリが消えた事情を聞いた直後は、サラレギーに対する怒りと、ユーリを心配に想う気持ちと肝心な時に置いていかれた悔しさに、他の事は全く何も考えられなかったのだが……
     ユーリの心配だけで今の今まで頭になかったが、猊下の方はどんな思いで一人眞魔国に残ったのだろうか?
     少年の後姿を眺めやりながら、ヴォルフラムは考え込んだ。

     思えば、こうして猊下と二人だけでいるというのも、あまりない事のような気がする。
     自分と猊下の間には大抵ユーリか他の誰かがいて、ユーリといるときの猊下は、いつも憎たらしいほど余裕たっぷりで飄々としていて、何の企みもなさそうなその実裏がありまくりのとぼけた笑顔で人をたぶらかす、ユーリの気の置けない親友で、頼りになる大賢者様だった。
     こんな冷たい雨の中でも……ユーリがいたならば。きっと文句の七つか八つも言い合いつつ脳天気に馬を進めていただろう二人の姿が、ヴォルフラムには容易に想像できた。

     ──常日頃の軽口を叩くこともなく、彼は影を背負い黙ったまま馬を進めている。
    (こんな彼は知らないし、見たこともない……)

     と、ふと思い出した。
     前に、こんな風に沈黙を纏った彼の姿を、一度だけ見たことがある。
     創主に支配された眞王陛下にユーリの魂が囚われていた、あの時の猊下と今の彼の雰囲気はどこか似ていた。
     太陽の光を失った月は沈み込み、茶目っ気のある明るい少年の村田健は影を潜めて、ヴォルフラムの目には、四千年に渡る記憶と知略とを秘めた大賢者の深淵なる精神が、目の前の存在の心の大部分を占めているようにみえた。

     彼を、「大賢者」を守らねばならない──。
     それは、ユーリに対する想いとはまた違う、眞魔国を守る者としての本能のようなものだ。また、それを別にしても、ヴォルフラムは彼のことをそう悪くは思っていない。
     ただ、距離感がつかめないのだ。
     年長組は、当然のように彼を大賢者として受け容れ、各々に適度な間合いを見つけ出している様子だったが、ヴォルフラム自身はどこか割り切れない中途半端な気持ちのままで、未だ彼との距離を測りかねる迷いの中にあった。
     ユーリと仲良くじゃれ合う姿を見れば羨ましくも一緒に交じりたくもあり、手に手を取りあって地球へと戻っていく二人の姿には婚約者として嫉妬もするが、大賢者として語る彼を前にすれば、彼は眞王陛下と並ぶ創国の英霊、貴族の一員として従うべき畏敬と敬愛の対象であるとヴォルフラムの体に流れる魔族の血がそう主張し始めて個人的な感情を押し止めてしまう──そんな、自分の心の中で繰り返されてきた堂々巡り。

     たぶん、彼も気づいているのだろう。
     ユーリが魔王としての体裁をあまり気にしないのと同様に、恐らく彼も大賢者としての体裁には利便性以上の理由では拘ってはいない。(方便としてはやりかねないが)大賢者としての威信を振りかざすやり方は彼の好みではないし、ムラタとして接すればムラタケンとして、大賢者として接すれば大賢者として、率直に彼が応えてくれる事は、ヴォルフラムにも既にわかっていた。

     だからだろうか。
     臣下として接してくるヨザックやコンラートに対しては時に大賢者として気兼ねなく指示を出す猊下は、態度を決めかねている自分に対しては(ユーリの婚約者ということもあるだろうが)それとなく気を遣い、直に頼み事をすることをなるべく避けているようにヴォルフラムは感じていた──

     物思いを中断する。
     ふいに、不自然な体勢で前のめりになって手綱を引こうとする姿が目に入り、ヴォルフラムはとっさに馬を並べると二頭分の手綱を引き寄せ、馬を止めた。

    「おい、大丈夫か?」
     半分ひとり言のようにくぐもった声が聞こえた。
    「……あともう少しなんだけどなァ。眞王廟に着くまではなんとかがんばるからさ」
    「がんばるって、」

     絶句して、固まる。
     雨空で陽が陰っているせいだけではない。仄明るい日中の光の中でも、彼の顔色が蒼白なのがはっきりと見て取れた。疲労が限界まできているのだ。ずぶ濡れになった黒髪、こめかみから頬に、身体に流れ落ちる雨水が形容しがたくアレで、悔しいけど超絶美形なんだよなこいつと一瞬見とれそうになるが、今はそれどころではない。
     
     きりと口を引き結び、馬から降りたヴォルフラムは愛馬に優しく声をかけ放してやると、相方の少年の馬の手綱をとった。馬をなだめつつ、ひらりと少年の前に乗り込むと、振り向きながら肩越しに声をかける。

    「しっかりしろ!気分が悪いなら我慢するな。少し下がって僕の腰に手を回せ」
    「フォンビーレフェルト卿」
    「お前を無事眞王廟に送り届けなければ、僕が兄上のお叱りを受けるんだ。眞王陛下からもどんなお仕置きをされるかわからん!」
     背中でくすりと笑う気配がした。
    「……僕は君の大事な婚約者じゃないんだけどなァ。こんなことしてもらっていいのかな」
     ヴォルフラムは鼻を鳴らした。
    「それだけの軽口が叩けるようなら、まだ大丈夫のようだな。……いくぞ」
     微かに声がした。
    「迷惑かけて、悪い」
    「余計な気を遣う必要はない。落ちないように黙って捕まってろ!」
    「あーあ、我ながら、みっともないなァ……」

     この意地っ張りめ。

     早く眞王廟に行こうと馬の足を速めようとして思いとどまる。ヴォルフラムに対する遠慮からではない。背中から回された腕には力が感じられず、足を速めれば落馬の危険があると、寸時にヴォルフラムは判断した。急く思いを抑えながら、手綱を操り揺れが大きくならない程度にぎりぎりの速度で馬を進めていく。

     冷え切っていた背中が少しづつ温かみを帯びていく。これがユーリだったら言うことないんだがなと不謹慎な事を考えていると、背後から呟きが聞こえた。

    「……優しいね。君は僕のことを怒っているんだと思っていたんだけれど」
     憤然として言い返す。
    「当たり前だ。怒っているとも。婚約者である僕に黙って、僕を置いて敵地のド真ん中に乗り込むなんて……お前もお前だ。大賢者ならユーリの無謀を諌めるべきだろうが。それが一緒になってこんな無茶をしでかすなんて」
    「ごめん」

     なぜだろう。どうしてこんなにも腹立たしく、辛くなるのか。
     彼の謝る言葉など、ヴォルフラムはこれ以上聞きたくなかった。
     こんなのは彼らしくない。いつも呑気でお気楽で掴みどころがなくて、口達者で口先ひとつで人を好いように動かしてしまう腹黒で……妬ましくて憎たらしくて、ユーリとは違う意味で其処にいるだけで「大丈夫だ」と周囲にいる人々を安心させてくれる、彼はそんな存在のはずなのに。

     そう、なぜ3人だけで敵艦隊に乗り込んだのかも本当は納得している。
     はっきり言えば、ヴォルフラムの剣と炎の力ではユーリの役に立てなかったのだ。あの作戦において最優先で求められたのは、次元移動に必要な力をユーリに貸せるだけの強い魔力を有する者。そして公平に見て、ユーリと同質の強力な水の魔力を持ち、かつユーリを護るという点で最も信頼のおける者といえば、それはショーリしか考えられなかった。

     それでももし、事前に話を聞いていれば……当然ヴォルフラムは一緒に連れて行けと主張したことだろう。そしてお人よしのユーリはあ~あバレちゃったんならしょうがない、いいだろ村田?と了承し、大賢者も渋谷がそういうなら仕方がないねと諦め、人数が増えた分だけ次元移動の際に消費される魔力も大きくなってユーリや眞王の負担が重くなる……だめだ。ユーリの安全を最優先に考える大賢者としてはそんな展開はできれば避けたかったに違いなかった。

     ただでさえ不確定要素の多い伸るか反るかの勝負において、少しでも勝率を上げユーリを護りユーリの負担を軽くするために、大賢者は最適な人選をした。……当然じゃないか。それについてヴォルフラムに対して遠慮や言い訳をする必要は欠片もない。
     だから──
     想いを飲み込むと、ヴォルフラムは強い口調で言った。

    「何度も謝るな。……解っているさ。ユーリは戦争を止めたがっていた。お前はユーリの願いを叶えようとしただけだ。だから……そんなに落ち込むな」
    「そんな落ち込んでいるようにみえるかな?」
    「みえる」

     ヴォルフラムはきっぱりと言った。

    「お前はできるだけのことをしたんだ。勘違いするな。悪いのはお前じゃなくてサラレギーだ。ユーリもへなちょこだが、体力だけをみればお前の方がもっとへなちょこなんだ。ユーリが不在の上に大賢者にまで倒れられてみろ。これまでに数え切れないくらい聞かされた台詞だろうがな。お前たちは自分たちが眞魔国にとって大切な存在だという自覚がなさすぎる。その点に関しちゃお前の方がユーリより悪質だ」

     一度話し出すと止まらなくなり、ヴォルフラムは喉元で止まっていた文句の言葉を威勢よくぶちまけた。
     考えようによっては滅多にない機会だ。この際、言いたいことを言っておくのも悪くないと、三男坊は長兄を見習って説教モードに入る意志を心に固めた。
     ヴォルフラムの決意を感じとったのか、諦めムードで苦笑する気配が背中から伝わってきた。

    「確かに、自覚がないんだよね。大賢者っていっても僕が何かしたわけじゃないから。君たちがそう思ってくれるのなら大賢者としての役割をちゃんと果たしたいとは思っているけれど」

     ぶちっと脳内の線が切れた気がした。
     馬鹿野郎、お前にそんな風に言われたら、お前ほど役に立てていない僕の立場はどうなる?
     大賢者のくせに自分のしてきた事も解ってないのか?
     たまらない気持ちとなって、ヴォルフラムは畳み掛けるように言い放った。

    「何を言っている。こちらの世界に来てからお前が何もしていないなどと、そんな無責任なことは言わせないぞ。全部お前がしたことじゃないか。……ユーリと一緒に『地の果て』を止めたのも。創主を完全に消滅させる道を開いたのも。事あるごとにヨザックや兄上たちをコキ使っているのも」

     ヴォルフラムは昂然と頭を上げた。

    「僕がお前を認めているのは、大賢者の記憶を持っているからじゃない。お前が一番ユーリのことを理解していて、ユーリのことを信頼していて、ユーリに力を与えてくれる存在だからだ。……まあ、ユーリを世界で一番愛しているのはこの僕だがな。分かったか?何に負けてもこれだけは僕は絶対に譲らないし負けていないんだからな!」
    「……」
    「信じろ。いや、お前だって信じているんだろう?ユーリは強い。必ず僕たちの元に戻ってくる。ユーリが帰ってきたときに、お前がそんな顔をしていてどうする?」
    「……」
    「ムラタ?」

     少年の声の代わりに、耳に快い音楽的な声が尊大に答えた。

    「案ずるな。消耗し過ぎて口がきけないでいるだけだ。落馬せぬようこれの面倒は俺が見ている。馬を進めていいぞ」

     ………。
     ………。
     ………。
     ………。

    「し、し、し……眞王陛下ッ!!!!」

     パニックのあまり思わず手綱を引きそうになり、慌てて自制するとヴォルフラムは馬上で姿勢を正した。
     突然降って湧いたシチュエーションに混乱のあまり頭がぐるぐるとしてくる。そうだ、後ろに乗っているのは大賢者なのだ。こんなことがあってもおかしくはない、おかしくないとは思うのだけれども……
     幾分冷静さを取り戻すと、相乗りの少年が落ちない程度に背筋を伸ばし、真直ぐに前を見ながら、背後にいると思しき英霊へとヴォルフラムは恐る恐る問いかけた。

    「眞王陛下がなぜ……?」
     思いのほか、気さくな調子で機嫌よく答えがあった。
    「事は緊急を要したが、彼を一人で行かせるわけにもいかなかったし眞王廟の兵をつけると目立ってしまう。それで、護衛代わりに俺がついてきたのだ。事態を即刻収拾する必要があったとはいえ、碌に休ませもしないでこれに仕事をさせたのは俺だからな。……俺の代わりに言いたい事を言ってくれて感謝するぞ、フォンビーレフェルト卿。俺の言うことには、大賢者はまともに取り合ってくれぬのでな」
    「そんな、ご冗談でしょう?」
    「冗談なものか」

     眞王廟でのやり取りを思い返し、眞王は溜息をついた。

     ……どういうつもり?僕だけ眞魔国に連れ戻すなんて?
     その理由はお前が一番よく分かっているはずだ。
     ──そうだね。作戦は失敗だ。すぐに血盟城に行って、フォンヴォルテール卿に事情を説明しておかないと。何も知らせずに渋谷が突然消えてしまったら国中が大混乱に陥ってしまう。下手をしたら戦争が治まるどころか広がりかねないしね。……時間差はどうなっているの?
     フォンビーレフェルト卿は仕事が早いな。そろそろ戦場からの知らせが血盟城に届く頃だ。
     なら、急いで行かないと……
     待て。お前も疲労している。血盟城へ行くのならその前に俺が──
     ダメだ。僕に力を使うのはなしだよ。そんな時間はないし、君も3人分の次元の扉を2つ同時に開いたばかりでかなり魔力を消費しているはずだ。こんな事で君に消えてしまわれたら僕が困るんだって。……そもそもこんな事態になってしまったのは、僕の判断ミスのせいなんだから。心配はいらない。自分の失敗の後始末は自分でちゃんとつけてくるよ。
     ふん。全く言い出したらきかない男だ。では、お前について行くくらいは構わないだろう。俺とて事の成行きが気になるのでな。
     いいけど……余計な手出しは無用だからね?

    「確かに、眞王廟を出た時にはまだ元気があったが、フォンヴォルテール卿らに後事を任せて気が抜けたのだろう。力を使った後のせいもあるが、むしろ心労だな。大賢者とて人間だ。全てを見通す事などできぬし、最善を尽くしても力の及ばぬ事などいくらでもあるというのに。自分の力不足から結果的にユーリを深く傷つけてしまったと自分を責め続けるのもいい加減にしておけと、幾ら言い聞かせてもこの頑固者は私の言うことには耳を貸さぬ」

     怒りで力が戻ったのか、むっとしたような掠れ声が眞王の話を遮った。
     
    「ったく……。頼むから、余計な事をフォンビーレフェルト卿に吹き込むのはやめてくれないかな、眞王?」

     声の出所から察するに、眞王陛下は極小状態で大賢者の肩に乗って小言を並べているようだった。
     嘆息しながら創国の魔王陛下はヴォルフラムに同意を求めてきた。

    「この調子だ。世の中広しといえども、この俺を邪魔者扱いにして箱に閉じ込めたりする男はこれくらいなものだろうよ」
    「は、箱?……って、禁忌の!?」
    「いや、ゴミ箱だ」
    「……人聞きの悪い。あれは小物入れだって」
    「お前はあの箱に書き損じの紙を入れていたではないか」

    (……これが眞王と大賢者の会話なのか?)

     ──眞魔国の民にはとても聞かせられない……

     僕の方こそ、小さくなってどこかに隠れたい気分だ──
     居たたまれない気持ちとなって、ヴォルフラムは雨の止みつつある空を見上げた。
     ユーリの言っていた通りだ。
     眞王陛下を相手にこの態度。
     こいつってば、冗談抜きで最恐だったんだ……

     そして、ふと気づく。
     腹が立って、辛くて、苦しくて、悲しくて。
     道中ずっと僕を苛んできたこの気持ちがどこからきたのか──今わかった。

     自分のした事のせいで、渋谷は傷つき苦しんでいるだろうに。
     何もできなくて。そばにいることすらできなくて。
     無力な自分が悔しくて。馬鹿な自分を打ちのめしたくて。

     ……僕にも覚えがある。
     僕の心はこいつに同情して、共鳴していたんだ。

     ユーリを想う同じ想いに──


     ふと気になって、ヴォルフラムは眞王に訊ねかけた。

    「眞王陛下は……なぜ猊下の作戦に力をお貸しくださったのですか?」
     一瞬の間があった。
    「……ふむ、俺とて無意味な戦いは避けたい。戦をせずに民の命が守られるならば、その方がよいに決まっているからな。それに──」

     眞王陛下の微笑が見えた気がした。

    「ユーリの命を託されるというのは、大賢者の俺に対する最大級の信頼の証といえよう。俺はその信頼に応えたかったのだ。……さあ、俺の城に着いたぞ。仕置きなどせぬから、お前も安心して休んでゆけ、フォンビーレフェルト卿ヴォルフラム」
    「ッ……!!し、眞王陛下っ!」


     眞王廟に着いた時には雨は止み、陽の落ちかけた薄明るい空には虹がかかろうとしていた。
     虹を見上げながら、ヴォルフラムは想う。
     あの虹が地球へと続いていたら虹の橋を渡って飛んで行くのに。
     ……いや、虹でなくとも愛は全ての心を繋ぐ最強の架け橋なのだから。時間も空間も軽々と越えて。

     ──僕たちの想いは、きっと必ずユーリの心へ届くに違いないと。


     馬から降りると、大切な乙女を抱き抱えて降ろそうとするかのように、ヴォルフラムは馬上の少年へと手を差し伸べた。照れ臭さに頬を赤らめて素っ気なく言う。
    「心配するな。ヨザックほどの腕力はないが、僕だってお前を抱えるくらいのことはできる」

     黒い瞳が瞬くと、少年の顔に悪戯っぽい笑みが浮かんだ。

    「地球じゃ結婚式のときに新郎が新婦をお姫様だっこするんだよね。うーん、なんだか君に抱っこされるのは凄く悪い気がするんだけど、いいのかな?」
    「な、何を言っている!!」
     金髪の下にある顔が赤く暴発した。

    「ち、違う!肩を貸すだけだ!誰が抱っこなんかするか!勘違いするんじゃな~いッ!!!」




                                 ──End──


    #イメージエンディング曲『ありがとう』
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