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    花影に微睡む 4



     ……ッ!……進藤ッ!


     誰かの呼ぶ声に、意識が浮上していく。
     よく、知っている。この声は──

    「……塔矢」
    「どうしたんだ、大丈夫か?」

     見上げれば。
     不安げに見下ろすアキラの顔が、逆光となって影が覆いかぶさるように直ぐ目の前にあった。背後には、光に透けて微風に揺れる桜の花が、一杯に広がっている。

     あァ、帰ってきたんだ……

     全身が強張って酷く怠い。現実を確かめるように、ヒカルはゆっくりと思い切り身体を伸ばした。目を閉じて澄んだ香しい空気を吸い込みながら、自分の胸底に秘めてきた記憶を深くなぞってみる。

     大丈夫。消えてない。何もかも覚えている。全部。

     頬が濡れているのに気づいて、涙を拭った。再び目を開けると、気遣わしげな眼差しを注いでくるアキラの方へと、照れ臭そうにヒカルは笑ってみせた。

    「んーん、あったかくてあんまり気持ちが良かったもんでさ。つい寝ちゃったみたいだ」
     安堵と怒りの色を滲ませながら、アキラが睨んできた。
    「バカを言うな!……ついさっきまで、本当にまるで死んでいるようだったんだぞ?救急車を呼ぼうかと……近ごろ少し疲れ気味なようだったし、またキミが倒れでもしたんじゃないかとボクは……」
    「ごめん。マジ寝てただけ。ここ、昼寝すんのにいーい場所だな」

     食いつくような視線がヒカルを捉え、アキラの手がヒカルの胸に、金髪をかき上げその額に当てられると、ふた呼吸の後に外された。
    「……ならいい」

     どっと疲れたように、気が抜けたように頬を緩めるアキラ。身体を起こして顔を赤らめながらそっぽを向くと、騒いで悪かったと、口の中でボソリと言う。

     下草の上に寝そべり、腕に顔を埋めながら、ヒカルは楽しげに言った。
    「……ずっと夢を見ていたんだ。三度のメシより碁が好きだった奴と一緒にいる夢。あ、お前じゃなくてさ」
     呆れたように目を見開くと、ふうっとため息を吐いてアキラはヒカルの隣に腰を下ろした。

    「その人と夢の中で打ってたのか?」
    「うん」
    「楽しかったか?」
    「うん、最高に。とても幸せだった……」
     へえ、といった表情で目尻を下げると、アキラは花を見上げて微笑した。
    「ふうん。キミがそこまでいうなんてね。ボクも、その人と打ってみたかったな。どんな人だったんだい、進藤?」
     梢から射す光に目を細めつつ、アキラを見つめる。
     ヒカルは微笑んだ。


    「聞きたい?オレが見ていた夢の話、アイツの話をさ──」



     光る空に、花びらが白く風に舞っていた。

     
     

                               -END-

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