SS部屋

    二次SS&感想置き場です

    プロフィール

    夏風

    Author:夏風
    拍手&一言連絡はこちら→_旦~~

    pixivリンク先はこちら


    土竜穴から引越しました☆

    SS用拍手(ジャンル別)

    コメントは任意&非公開です☆

    ブロとも申請フォーム

    カウンター

    スポンサーサイト

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。

    クーゲル回想録(前編)

       
    【警告!】
     盛大にネタバレしていますので、『少年と巨人』未読、本編アニメ未視聴の方は絶対に読まないようお願いいたします。
    『少年と巨人』の後~アニメ本編直前の話になる予定ですが、『少年と巨人』が未読だと伝わらない&それ以上にネタバレ絶対にもったいないので、厳守でお願いします。

     少年時代のレドとチェインバーの遣り取りがもっと見たくて欲求不満解消に書いたものです☆
    (翠星のガルガンティアの世界に、ご自分なりの思い入れがある方もスルー推奨です)


     『少年と巨人」を読んでいますか?
      本編アニメを視聴していますか?
       → YES の方のみ、お進みくださいませ<(_ _)>

     早く本編の続きが観たい!!><


     追記:
     本編がまだ終了していないので、この後の展開次第で改稿、取り下げする可能性があります
     突貫で二日で書いたので、気づいたところで推敲入れます
     後編は気長にお待ちください(もしおられたらですがw)














       
     その少年が送られてきたのは、クーゲルの予想より120時間も早かった。


    「マシンキャリバーK-6821チェインバー操縦者レド少尉、着任しました」
    「ようこそ、クーゲル隊へ。貴官を歓迎する」

     まだあどけなさの残る白い顔に、クーゲルはじっと目を注いだ。
     鍛えられてはいるものの、成長しきっていない細い身体。
     声変わりの中途にある高めの掠れ声。
     幼く見えるのも無理はない。事前に送られてきた人事データによれば、目の前にいる少年は幼年学校を卒業してまだ2ヶ月にも満たないのだ。──しかし。

    (そんな可愛らしい代物じゃなさそうだな)

     容姿に似合わない、落ち着き払った態度。初めて会う年長者のクーゲルを前にしてもびくともしていない。上官の射抜くような視線にも動じず、感情を映さない紫の瞳が、強い光を湛えてクーゲルの眼を見返してきた。


     部屋を出ていく少年を見送ると、同席していた士官のケリイが口を開いた。
     
    「彼がへヴァンの生き残りですか」
    「そうだ。卒業して早々激戦区に当たるとは運の悪いやつだが。生きて帰って来たのは単なる奇跡ではないようだな。とはいっても例の戦闘からまだ5日しか経っていない。上からの情報ではへヴァンから帰還した兵員の多くはまだ休養中のはずだ。見た目問題なくともメンタルでダメージが残っている可能性もある。当面の間は気をつけてくれ」
    「はい」

     へヴァンは人類銀河同盟の辺境に位置する居住区の一つである。
     7日前にヒディアーズの奇襲攻撃にさらされたへヴァンは、圧倒的な数の敵の前になすすべもなく陥落。防衛任務にあたっていたマシンキャリバー隊は壊滅し、戦死者は8割に上ったともいわれていた。
     新任の兵士はその残り2割のうちの一人らしい。たまたま運が良かったのか、優秀だったのか、それとも要領のいいやつか。
     死を恐れぬ人類銀河同盟のパイロットとはいえ、生き残ることに無関心なわけではない。
     死地を生き延びた新兵の話は、彼が配属されることが伝わって以来、隊内でのちょっとした噂の種となっていた。


    「ストライカー」


     個室のシミュレータシートに身体を預けると、クーゲルは自らのパイロット支援啓発インターフェイスシステムに呼びかけた。
     マシンキャリバー隊の指揮官としては、新顔がどんなパイロットなのか把握しておくべきだ。万一、味方を犠牲にして助かろうとするような問題行動のある兵士だとしたら、厳重に注意しなければならない。着任手続きが終了した今なら、ストライカーはレド専用の機体に搭載されたAIから詳細な情報を引き出せるはずだった。

    「ヘヴァン防衛戦当時のレド少尉の行動記録を提示しろ」
    「了解。マシンキャリバーK-6821機の回線を開き、当該情報の送信を要求する」

     ストライカーの要求に応えて、レドの機体に搭載されたAIであるチェインバーが情報を送信してくる。
     スクリーンに、レドが受けた命令、チェインバーに指示した命令、実際にとった行動のデータが時系列で映し出されはじめた。

    (なるほど。……生き残るわけだな)

     腕を組みつつ、スクリーンに目を走らせながら、クーゲルは心密かに舌を巻いた。

     どうやらレドの所属していた隊の指揮官は標準的な判断能力の持ち主だったようだ。
     一定の戦略的優位性が保たれた通常の戦闘においてなら、問題なく対処できただろう。彼はへヴァンが放棄されるとは思わなかったのだ。
     ところが、予想を上回る大規模なヒディアーズの侵入を許し、圧倒的な戦力差を前にしてこれ以上の戦闘は被害を増大させるだけだと、司令部は早々にへヴァンに見切りをつけてしまった。来るはずの援軍が上層部の作戦変更により投入されなかったことで、へヴァンに駐留していたマシンキャリバー隊の命運は決した。

     指示された目標地点の確保に踏みとどまった中隊は、指揮官を失った後、大混乱に陥った。
     本隊との連絡が途絶したままいつ終わるとも分からぬ戦闘に直面した兵士の多くは、半ば盲目的に最終命令を守り無益な戦闘を継続しようとした。
     驚いたのは、その混乱の最中にあって、実戦配備されて間もないこの少年が、いち早く全体の戦況を冷静に分析し、掌握していたことだ。

     援軍が来ない場合を想定し、机上の空論ではない極めて実戦的で綿密な戦力計算を行い、防衛陣により本隊との連絡が回復するまで持ちこたえるのが最善と判断。チェインバーを通じて各機体のAIに行動を提案。同意を得た各機と連携。自ら取り得る最大有意と考える行動を即時選択。
     誰が何を考えるべきか厳重に統制されている銀河同盟にあっては表立って推奨される行動ではないが、その実、許容される範囲内においてはパイロットには臨機応変に対処する能力が暗に求められている。レドの冷静で柔軟な判断が、結果的に彼自身と少なからぬ兵員の命を救ったのだった。
     上層部が末端を切り捨てることを予期したような思考の在り様は反社会的ともとれるが、一方で、レドは命令を順守し、率先して戦いに身を投じて、住民を避難させ、仲間を守りさえしている。冷徹に、効果的に。
     単独での戦闘能力は早くもSランクに達しようとしていた。

    (これは掘り出し物かもしれんな)

     上手くすれば指揮官候補となる人材かもしれない。
     クーゲルはさらにストライカーに情報の提示を求めた。

    「レド少尉の適性解析を提示しろ」
    「了解」
     スクリーンの表示が変わる。

     タイプ:《盾》
     戦意:OK
     命令順守:OK
     成長変化:軽度の感情喪失、目的意識の凍結
     障害程度:不明
     総合評価:問題なし


    「──障害?」

     クーゲルは首を傾げた。
     あまり感情を表に出さない冷静なヤツだと思っていたが……生来の気質ではないのか?
     一見しただけでは、特に障害があるようには見えなかったが。

     ウィンドウを閉じると、クーゲルはアームシートに身を沈めた。
     急いで結論を出す必要はない。実戦を重ねるうちにレドの兵士としての資質は自ずと明らかになるだろう。
     それに、へヴァンで生き残ったからといって次の戦闘で生き残れるとは限らない。マシンキャリバー隊に所属することは常に死と隣り合わせの状況に置かれることを意味する。その事実は、クーゲルを含めた全てのパイロットにいえることだ。
     当分は彼の仕事ぶりを見守ればいい。

     防衛任務につくパイロットの寿命がどれほどのものか。
     幾多の戦場をくぐり抜け虚空に瞬く光の数々を見続けてきたクーゲルには、それが十分すぎるほど分かっていたのだ。





     無重力空間となっている広い整備区画に配置されたハチの巣にも似た無数のケージ。その一つに、他のマシンキャリバーと同様にクーゲルの乗機であるストライカーは収納されている。

    「クーゲル隊全機体との回線を開けろ。チェックに入る」
    「了解した」

     ストライカーのコックピットの中で各機体の点検を行っていたクーゲルの耳に、言い争うような会話が聞こえてきた。
     指揮官として、クーゲルは各機のパイロットとAIの関係が上手くいっているか常に把握している。ちなみに各機体の状態は全て良好で、こんなやり取りを交わしそうな機体は1機しか思いつかなかった。

    《やりなおしだ。どうしてマキシマイズを途中で終了した?》
    《全開出力でデフレクター・ビームによる全周攻撃を100秒以上継続した場合、機能の安全確保が維持できないと判断》
    《焼き切れてもいいと言っただろう。これはお前の限界能力を知るためのシミュレーションなんだ。勝手に止めるんじゃない》
    《異議あり。無謀な戦闘の継続より機能の安全確保を優先するべきである》
    《そう言ってられない状況もあるんだ。いいからやれ》

    (どうやら実戦を想定した戦闘シミュレーションを行っているようだな)

     相当なじゃじゃ馬だなと、クーゲルはチェインバーに少し同情した。
     通常、幼年学校を卒業したばかりのパイロットは、パイロット支援啓発インターフェイスシステムの提言に従うものだ。システムに搭載されたAIは、マシンキャリバーに搭乗するパイロットが未熟であったとしても支障なく任務を遂行できるよう、経験の浅い少年兵を補佐し、兵士としての能力の向上を促す役割を担っている。

     マシンキャリバーに搭載されたAIは人類銀河同盟のマザーコンピュータの管理下にあるが、同時に配置先のパイロットを上位者として持つ。マシンキャリバーとパイロットは一機一人で一つの小隊クラスとみなされ、命令系統としては、例えるなら支援啓発インターフィエスシステムが小隊軍曹として助言し、パイロットが少尉として最終的な判断を下す関係にあるのだった。
     パイロットとシステムの間にも一種の信頼関係ともいえる絆が存在しうる。両者が協調しなければ、マシンキャリバーは十分な戦果をあげることができない。人間同士がそうであるように、人とAIも、互いの情報を共有し気心の知れた間柄になるには一定の時間を必要とするのだ。

     再度、戦闘シミュレーションを試みるチェインバー。
     レドがOKを出し、新たな戦闘シミュレーションを指示する。
     この程度の不協和音は時間が解決するだろうと、クーゲルがK-6821機から注意を逸らそうとした、その時チェインバーが言い始めた。

    《貴官の体内温度のさらなる上昇を確認。平均体温より1.2℃を超過》
    《問題ない。続けるぞ、チェインバー》
    《提言。戦闘シミュレーションを終了し、貴官は休息すべきである》
    《問題ないと言っているだろう》
    《異議あり。本インターフェイスは……》
    《黙れ》

     クーゲルはため息をついた。
     同時に、呆れながらも安堵めいた感触を覚える。レドは大丈夫だ。いろいろ問題はあるが、一番大事なものをコイツはちゃんと持っていると、この遣り取りでクーゲルは確信した。

     本質は《盾》か。
     命知らずがまた一人増えたようだな。

     すかさず通信回線を開くと、有無を言わせずクーゲルは一人と一機の会話を両断した。

    「レド少尉。体調管理のなってない者を出撃させるわけにはいかん。直ちにシミュレーションを中止し、休息に入れ」
    「……了解しました」

     見られていると気づかなかったのだろう。突然割り込んできたクーゲルの声に、レドは驚いた様子で顔を上げると、通信ウィンドウに映された上官に目を合わせ、戸惑ったように頷いた。
     1秒後、K-6821機の回線が閉じられる。

     チェインバーの格納されているケージを見ると、コックピットのハッチが開き、慎重な足取りで降りてくるレドの姿が見えた。チェインバーの緑の眼が瞬くのに気づき、レドの動きが一瞬固まる。



     なかなかいい相棒じゃないかと、クーゲルは口の端を上げた。
     


    *    
    スポンサーサイト

    コメント

    コメントの投稿








     ブログ管理者以外には秘密にする
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。