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    楽しいお茶会

     夜道をひたひたとついてくる、怪しい者の気配がする。

    (十五間…十間、八間、――五間!!)

     龍麻は振り向きざま、後から飛んできた捧手裏剣を、手にした学生鞄で打ち落とした。
     同時に屈みこみ、左手の角から突如現れた黒い影が放つ必殺の蹴りを、紙一重の差で見切りかわす。
     カバンを影に向かって投げつけると、間合いを取りなおし、構えを取りつつ向き直った。
     そのこめかみに青筋が浮かぶ。

    「また、お前らかぁぁ~ッ。今度という今度は許さねェぞッ!いいかげんにしろ~ッッ!!」

     二つの怪しい影は、動きを止めた。
     怒り心頭に達してわめく標的を気に留めた風もなく、立話をはじめる。

    「チッ……。また、失敗してしまいましたね」
    「ああ。なかなか予定通りにはいかないね。やはり、最初の計画通り、君が囮になった方が良かったかもしれないな」
    「じゃあ、次はそれで試してみましょう。少し、冷却期間を置いてからになりますが」
    「それまでは、別の課題に取りかかるとしようか。今度は、何がいいかな」
    「そうですねぇ」

    「おめ~ら、人の話を聞いてんのかよっっ」


     終わる気配のない二人の会話にしびれをきらし。標的は最終奥義を発動した。



       『 楽しいお茶会 』



     その半時後。
     如月家の座敷で、湯呑みと茶菓子を前に、三人の若者が顔をつき合わせていた。

    「ごくごくごくごくごくごくごくごく……ッ」

     音を立てて、湯呑みが卓袱台に叩き付けられる。
     如月骨董品店の店主とその相棒は、一見、神妙な顔をして、三人目の青年の顔色をうかがっていた。
     眉間に縦じわを寄せ、腕を組み、怒りにふるふると震える龍麻。上目使いでその元凶を睨みつける。
     最高潮に怒っている黄龍を前にして、二人に動じる気配は全く見られなかった。

     だが、もう我慢も限界だ。相手の態度がどうであろうと、言うだけのことは言っておかねばならない。ここで説得を諦めてしまうのは、すなわち、平穏な私生活を放棄するということを意味するのだ。
     頭痛を堪え、ともかくやってみようと、龍麻は口を開いた。

    「お前らの共通の趣味が、暗殺と忍びの演習だってのは、よ~~く!解かっている。だが!前にも、言ったよな?俺を相手に実地訓練しようとするのはやめろ、と」
     暗殺者の青年は、眼を宙に浮かせたまま、いちおうの詫びの言葉を口にした。
    「すみません。でも、どうしても、龍麻さん以上に強度と耐性がある手頃な標的は見つからなくって。一般人を相手にすれば、犯罪になってしまいますし」
    「俺だって、フツーの一般市民だッ!マジで訴えるぞ」

     壬生が肩をすぼめ、如月が後を引き取る。
    「フッ。龍麻、それは無駄というものだよ。僕たちが警察に捕まるような証拠を残すと、本気で思うかい?」

     ジト目で店主を睨む。
     敵は雅な手つきで、茶を口に含んでいた。
     無駄を承知で、再度試みる。

    「ともかくだ。俺を標的に遊ぶのは、止めてもらおう。はっきり迷惑以外の何モンでもないんだ。お前らのせいで俺が被っている、物理的精神的被害の甚大さ、わかる?」
    「「わからない(わかりません)ね」」

     即答する二つの声。追い討ちがかかる。

    「それに、遊びじゃありませんよ。僕たちは、いつも真剣なんです」
    「だあぁぁぁぁぁ~~~ッッ」

     絶望に頭を掻きむしる友を前に、忍者と暗殺者は困惑の視線を見交わした。
     壬生が、手刀で煎餅を真二つに割る。
     一方を如月に渡し、一方を齧り出した。
     如月は、龍麻が飲み干した湯呑みに、茶を注ぎ足す。
     卓袱台に突っ伏したままの青年に、気の毒そうに声をかけた。

    「そうか。僕たちとしては、そんなに君が困っているとは、気づかなかったんだよ。僕らの相手をするのは、君にとってもいい修業になるんじゃないかと思っていたものだから」
    「な~ッ!ならんならんっ。よけいなお世話だっつーのっ!」

     ふて腐れる龍麻をじっと眺め、煎餅の最後の欠片を呑み込み、壬生が言う。
    「やはり、僕にはわかりません。龍麻さんが僕らから被ったという被害って、いったい何があるんです?どうも、思いつかないんですよね」
    「僕も、それを聞こうと思っていたんだ。龍麻、そこのところを僕たちにも解かるように説明してくれないか?」
    「……お前ら、本っ当~に、解かってないのか?」

     二つの頭が縦に振られる。
     真面目な顔で龍麻の言葉を待つ二対の瞳に、龍麻は溶けそうに脱力した。
     恨みがましい視線で睨むが、敵は堪えた様子もなく視線をかえしてくる。
     壬生は、茶を飲みはじめた。

    (くそッ。こーなったら、徹底的に文句を言ってやるッ)

     そして、暗殺者と忍者に対する、龍麻の必死の抵抗が始まった。


     【事例その壱】

    龍麻:最初は、一ヶ月前のことだ。今日みたいに路上で俺を襲っただろう。

    如月:ああ。あれは……確か『待ち伏せ』が課題だった時の話だな。そうだろう壬生?

    壬生:そうです。道すがらの襲撃は、暗殺の基本ですからね。

    龍麻:ぬかせッ!あんとき、お前らが使ったペイント弾のせいで、俺の服はメチャクチャになっちまったんだぞッ!デート前だったんだぜ、俺はッ!お、おかげで、遅刻はするわ、振られちまうわ……くう~~っ(涙)。この責任、どーとってくれるんだよッ!

    如月:ペイント弾は水性のを使用している。洗えば落ちるよう、気は遣ったんだが。

    壬生:そうですか。友人の不純異性交際を阻止したという成果もあったのですね。知りませんでした。

    龍麻:だ~ッ!人の話を聞けっつーのっ。それに誰が不純だッ!俺の純情を踏みにじりやがってっ!

    如月:まあ、落ちついて。ところで、その女性とは、どこで知り合ったんだい?純情というからには、歌舞伎町あたりで京一くんとナンパで引っかけたとか、行き先はホテルだったとか、そういうわけじゃあないのだろう?

    龍麻:う……(絶句)。それは、その……(汗)。

    如月:フッ。やはり、そうなのか。なら、相手の女性にとっても僕たちは良い事をしたというわけだね。

    壬生:僕たちの作戦に誤りはなかったんですね(喜)。

    龍麻:どーしてそうなるんだよ~ッ!(悔ッ)


    【事例その弐】

    龍麻:じゃあ、俺のアパートに不法侵入した時のことは、どーなんだっ。

    壬生:その時の課題は、『潜入・窃取』でしたね。

    如月:そうだった。いかに標的に気づかせずに忍び込むか。そして、いかに上手く目的の物を入手するか、それが課題だった。

    龍麻:なにが、「気づかせずに」だ。あんな大きな音立てて、ベランダから侵入して来たくせに。おかげでだな、外に出て追いかけた俺の方が、覗きヤローか下着ドロと間違えられて、ひでー目にあったんだぜ。自分のパンツ握り締めて立ってたら、『男のパンツを盗った間抜けな下着泥棒』って誤解されてよッ。近所のオバサン連中から小学生にまで、後ろ指差されちまうし(悔涙ッ)。なんで俺のパンツなんか盗ってったんだよッ。

    壬生:如月さん、やりましたね!あの作戦は大成功だったようです(興奮)。

    如月:ああ。彼はまだ気がついていないようだ(喜)。フッ、嬉しいよ。僕らもやるもんだね。

    龍麻:な、なんだよ??なにをしたってんだよ?

    如月:あの時は機密書類を入手する場合を想定して作戦を組んだのさ。つまりだ。君が居る時に、しかも気づかれないよう、如何にして目的の文書を手にいれるか。それが、課題だった。

    壬生:案はいろいろあったんですよ。原始的ですが、力ずくで気絶させるとか、部屋に睡眠薬を散布するとか。だけどそれだと装備が大変だったり――そもそも、不自然な状況になってしまいますからね。標的に何かあったと気づかれるようでは、プロらしくない。課題をクリアしたとはいえませんでしたから。

    如月:いかに自然な状況をつくりあげるか。それには苦心したよ。それで、下着泥棒を装った壬生が、ベランダに忍び込み、わざと気がつくように下着を盗って、君を外に誘い出した。その後、僕がゆっくりと誰もいなくなった部屋で、目的の物を手に入れたってわけさ。

    龍麻:……【怒】て、てめーらぁ~、そんなことをそんな嬉しそうにいうかあ~ッ!しかも、結局、俺の部屋から何を持ち出したんだよッ。

    壬生:それなら、別の演習を試みたついでに、もう元に戻してありますよ。

    龍麻:なんだと!あの後、またやったのかっ。い、何時の間に…………。おい、すごく気になんだよ。一体、何を持ってったんだ?

    如月:フフッ。まあ、それは秘密にしておこうか。

    壬生:心配しなくても、期末テストで生物が学年最下位だったなんて、誰にもいいませんから。

    龍麻:な、なにい~~~ッ!俺の成績表かッ。そうなのか~ッ!(赤面爆発)



     午前をまわる頃には、龍麻は力尽きていた。
     夜行性の二人は平然と、次の課題に取りかかろうと相談をはじめている。

    「これだと、うちの店では調達が難しい装備が必要だね」
    「では、学校の備品をちょっとだけ借りてきましょうか」
    「まさか、その課題の標的は、また俺……なのか?」

     否定の返事はない。
     龍麻は、半眼のまま沈んでいった。

    「お前ら。他人を巻き込む前に、自分らでできることは自分たちでしようとは思わねーのか?二人いるんだから、マンツーマンで互いを標的にしたっていいんじゃねーか」
     壬生が答える。

    「もちろん、互いを標的にした課題もありましたよ。龍麻さんを標的にするのは、基本的に連携が必要な時の課題だけです」
    「単独行動を想定した課題は、もうお互いで試行済みなんだよ。例えば、『潜入・窃取』の課題では――確か、その時の目標は、僕は壬生の身分証明書を入手することだったが──壬生が肌身放さず持っているものだから、苦労したよ」
    「僕は、如月骨董品店の招き猫でしたね。店の盗難防止用トラップには、苦労させられました。トラップが外されるのは、如月さんが磨いている時だけでしたから」
    「それで、その課題はクリアしたのか?」

     二人は苦笑した。
    「「いいや(いいえ)」」
     尊敬の眼差しで見つめ合う。
    「お互い、手の内が解かり過ぎるほど解かっていてね。何をやっても、引き分けになってしまうんだよ」

     頭を振りながら、忍者が溜息を吐いた。
     龍麻はこれが最後と、必死の抗弁を試みる。

    「おい、よく考えてみろ。俺みたいなただの高校生相手に訓練しても、限界があるんじゃねーのか?ハードルは高い方がいいだろう。俺なんかで満足せずに、作戦レベルを上げたらどうだ。御門なんか、いいんじゃねぇ?暗殺と忍びの専門家として、あれ以上の標的はないと思うぜ」

     暗殺者は肯いた。

    「なるほど。一理ありますね」
    「ホントかッ?本当~っに!そう思ってくれるかっ?」
     半泣き状態で、拝むように服の裾にすがる龍麻。

    「そうだね。標的の生態が変われば、同じ課題でも別の角度から検討する余地が生まれそうだ。……さすがだ、龍麻。素晴らしい案を提供してくれて、ありがとう」
    「俺も、お前らの口から、これまでで最高にいい台詞が聞けたぜ!」

     これで解放される!と、泣き崩れる友の肩に、如月が優しく手を置いた。

    「龍麻。君はどう思っているかわからないが……君には感謝しているんだよ」
     ふっと、遠い目になる。
    「君は、誰にも理解されず孤独な闇の世界で生きてきた僕たちに、最高の友を得るきっかけをくれた」
     壬生が、友情と感謝に満ちた眼差しを向ける。
    「龍麻さんと出逢えたこと、幸運に思います。あなたのおかげで、僕たち二人は、こうして巡り逢えたのですからね」


     その瞬間の三人は、かつてない深い友情のオーラに包まれていた。





     夜道を、自宅のアパートへ向かって歩きながら、龍麻の心は解放感に満ち溢れていた。
     思わず、口からは笑みが、鼻からは歌がこぼれ、足はスキップしてしまう。
     誰に見られようが、どうでもいい気分だった。
     御門には悪いが、これで平穏な日々が戻ってくるだろう。
     今夜からは、枕を高くして眠れそうだ。
     龍麻は安堵の溜息をつくと、幸せを噛み締めながら、家への道を急いだ。
     

     その幸せは、数日後、芙蓉が龍麻のアパートを訪れるまで、続いた。

    芙蓉:「主命により、お命、頂戴仕ります」

    龍麻:「なッ!どーしてなんだ、なぜなんだ!?」

    芙蓉:「暗殺者・壬生、忍者・如月に命じて、我が主を襲撃された――身に覚えがあるはずです」

    龍麻:「ない、ないッ!それは、何かの間違いだぁッ!あいつらが勝手にやってるだけで、俺は全く関係ないっ!」

    芙蓉:「お二人は、仰いました。──『 龍麻様に言われたから 』、と」

    龍麻:「ち、違うッ!それは誤解だあ~~~~ッッ!」

    芙蓉:「問答無用です」


     そのころ、時を同じくして御門家の屋敷には──
     嬉々として「課題:『脱獄』」に取り組む、幸せそうな忍者と暗殺者の姿があった。


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