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    Missing half 2



     飛晃艇から地上を見下ろせば──
     目指すレプリカの集落は、深い森に埋もれた大陸の外れにあった。

    「レプリカたちとも話し合ったんだが。すでに人の住んでいる場所に国を作ろうとすると、追い出された人たちとの争いになるからな。それくらいなら、魔物が多い土地でも森を切り拓いて人の住める場所を新しく作った方が、長い目で見れば平和に安心して暮らせるってことらしい」
    「それで、お前たちがその面倒事を引き受けたってことか」

     アッシュの問いかけに、ガイとティアは顔を見合わせた。
     ティアの腕の中では、ミュウがすやすやと眠っている。

    「力を貸しているのは俺たちだけじゃないぜ。居住区の確保に大活躍だったのは、むしろジェイドだな。引き受けたというよりは、自立できるようになるまでレプリカたちの手助けをしてるというか。人間同士の争いは極力避けるに越したことはないし、魔物相手の方がまだ気は楽だ。ピオニー陛下やキムラスカ王も支援を約束してくれている。悪くない条件だったと思ってるよ」
    「キムラスカやマルクトの兵はいるのか?」
     ガイは頷いた。
    「まあな、数はだいぶ減ったけど。フォミクリー技術を応用した外壁や建物や灌漑施設も大方が完成して、2年経った今ではかなり安全になったんでな。ジェイドとセシル少将配下の守備隊を残して軍のほとんどは引き揚げている。今のところ、数百人規模の集落が全部で12か所か。農地の目途もついたし、彼らだけで自衛しながら自給自足できるようになるのに十年はかからないと思う。今のところ物資の受け取りと配分程度はレプリカたちで対応できてる状況だ」




    「アッシュさーん! 何かあったら連絡くださいねー!」

     飛晃艇の巻き起こす旋風に、赤い髪が吹き上げられる。
     目を細めて上昇していくアルビオールを見送るアッシュの姿に、本当はあれに乗ってギンジと一緒に行きたかったのかもなとガイは思った。今は大人しく行動を共にしているアッシュだが、本来ならば他人に動かされて自分の行動を決めるのは彼の流儀ではない。状況を見定めるまでは付き合ってやるがその後は好きにさせてもらうといった処だろう。

     ガイとティアに向き直るとアッシュは言った。

    「それで、俺はこれから何をすればいいんだ?」
     ティアが答えた。
    「そうね。案内するわ」




     






     トクン


     ──ゆるく、フォンスロットが繋がっているのを感じる。

     これはオリジナルとレプリカ、俺たちの間でしか分からない感覚だった。俺の身体の奥底、意識の最深部には、あいつのフォニムが満ち溢れ、やつの命が息づいていた。
     以前と違うのは、接続はあいつからの一方通行で俺の方からは回線を開けないということ。恐らく、あいつの方からは開けるのだろう。アクゼリュス崩落直後のように、奴は俺にくっついて俺の行動を中から見ている。眠っている時はあいつの気分次第でまれに言葉を交わせたが、起きている時にあいつが表にでてくることはなかった。

     もどかしさに、苛々する。
     胸倉をつかんで怒鳴りつけてやりたいのに、俺の意識がはっきりしている時は、あいつは姿を見せようとはせず、言葉すらかけて来ようとはしない。そこに居るのが分かっているのに、手に届きそうなくせに、俺の方からはあいつの意識に一切触れることができない。

     いったい、何を考えてやがる?
     ……考えるまでもない。あいつのことだ。自分は消えてもいい無価値な存在だとか、消えるならレプリカの自分の方だとか卑屈で自虐的なことだろう。最後の最後まで、あいつは自分以外の人間の事しか考えていなかった。
     苛々しすぎて反吐が出そうだ。あれだけ言ってきかせても、まだわからねえのか?
     このまま、まともに文句の一つも言えないままに、あいつは消えてしまうのか?
     何もかも、面倒事の全てを俺一人に押しつけて、てめえは逃げようってのか、この屑め。そんな身勝手が通ると思ってるのか?



     ルーク



     ──そんなクソみてえな結末は、この俺が絶対にぶった切ってやる……ッ!!!

     







     集落に来てから、三日後。
     魔獣の群れが多数異常出現したとの報告があったこともあって、当面の俺の仕事は集落の守備要員ということで落ち着いた。
     正直なところ、魔獣が出てきたのは有難かった。ヴァンの妹は遠慮を知らないし人遣いが荒い。この鮮血のアッシュにレプリカの子供の子守りや飯の支度をさせようとするのはあの女くらいのものだ。

     レプリカの集落は至極平穏そのものだった。二日目にはあまりの退屈さに俺は死にそうな気分になった。
     レプリカたちは、妙な条件付けさえされていなければ基本的には従順だ。決められたスケジュール通りに生活必需品の配給を受け、集落を維持するために必要な作業を行い、いずれはレプリカ達だけで自活していけるように農作業や物作りを学んだりと、彼ら自身はそれなりに日々を送っている。満足に教育を受けてこなかったレプリカ達の世話も、今では人並みに暮らせる程度には人社会に順応できた他のレプリカが面倒をみているらしい。レプリカ同士で教え合えるようになる軌道に乗せるまでが大変だったんだぜと、ガイは感慨深げに集落を見渡した。
     
    「ところでアッシュ。お前、体調に問題はないか?」
    「ああ、特に何もない」
    「そうか。明日から数日の間、集落周辺の哨戒に出るんだが。お前も一緒にいくか?」
     返事など考えるまでもない。ヴァンの妹にあれこれ雑事を押しつけられるくらいなら、魔物と闘う方が千倍マシだ。
    「わかった。いこう」
     ガイは真顔になると、まじまじと俺を見つめた。
    「もし身体とかフォニムに異変を感じたらすぐに言えよ。よーく念を押しておくからな」

     どこまで過保護なんだ。俺はあいつじゃないと苛立ちまぎれに言いそうになって……俺は言葉を飲み込んだ。
     ガイに背を向けて一言返すと、俺は歩き出した。

    「無用の心配だ」

     俺のではない記憶が呼び起こす既視感。俺自身に対しては向けられた記憶のない、情愛に満ちたガイの視線が、俺を通してあいつを見ていた。

     ──ガイが俺の中に「ルーク」を見るのは構わない。
     今の俺の半分はあいつでできている。その半分に対して俺には責任があるからだ。
     だが、やつの代用品として俺自身を見るなら……それを許すことは俺にはできなかった。

     全く、いいかげんにしやがれ。
     俺は病人じゃねえ。何も起きるはずはないだろうが。
     いや。

     あいつを引きずり出せるなら、むしろ何か起きて欲しいくらいだがな。
     

     予想外の長閑さに、気が緩み過ぎていたのかもしれない。
     後になって思い知るが、俺はジェイドの懸念を真剣に受け止めてもう少し慎重に行動すべきだったのだ。
     おかげで、魔獣討伐の後。


     俺は、帰りはガイに担がれて帰還するという大失態を晒すことになった。
      


     






     出発の前夜。

     いそいそと薬の用意をしているティアの姿を、ガイは半分呆れ顔でながめていた。グミや瓶の並べられたテーブルの端では、ミュウが長い耳を揺らしている。

    「おいおい、そんなにグミ入れてどうすんだよ」

     どの回復薬を優先させようかと、小袋からグミを出し入れしていた手が止まった。
     戸惑いがちに見上げてきたアイスブルーの瞳が、ガイの視線とかち合った。

    「え? あの……今度の哨戒は、私は留守番でしょ? 貴方たちが怪我をしても治してあげられないから心配で……」
    「ルークがか? それともアッシュがか?」
     即答された。
    「二人ともよ。当たり前のこと聞かないで」

     ガイの口角がわずかに上げられた。証明されるまでもない。
     声が聞こえなくとも、姿が見えずとも。
     理屈抜きで、俺たちはどこかルークの存在を信じているのだ。アッシュの言葉は、仲間たちの抱いていた儚い希望を強い確信に変えた。

     ルークは生きている。

     そうは言っても──
     腕を組んで壁に背を預けて立ちながら、ガイはぼそりと言った。

    「ティアはあいつのこと見ていてどうだ? アッシュの言うようにルークはあいつの中にいると思うか?」
     小首を傾げるティア。
    「今のところ、彼はアッシュにしか見えないわね」
    「どうしてそう思う?」
     小さく肩がすくめられた。
    「昨日、彼に作ってもらったシチューの中にニンジンが入ってた。アッシュも食べていたし、とても美味しかったわよ」
     二人の間に、穏やかに思い出し笑いが交わされた。
    「ルークじゃあの味は出せないか。レプリカの子供たちには怖がられていたようだし……ま、機嫌の悪いアッシュを前にしたら大人だってビビるけどな。あの威圧感はルークじゃ醸し出せないよなァ」

     無表情にレプリカの子供を見つめていた彼。不意に細められたその眼差しに一瞬走った光をティアは思い返していた。レプリカたちの境遇か、過去の「ルーク」としての思い出か。泣きそうになりながら懸命に歩行訓練をしていたあの子を前にして──彼はいったい何を思ったのだろう。

    「彼はルークとは違うわ。でも……似ているの。意地っ張りで不器用で……優しさを表に出すのが上手くなくて。自分の痛みを抱え込んで不安や辛い気持ちを隠そうとする。仕草も表情もぜんぜん違うのに、アッシュとルークは本質的なところで同じ匂いがするわ」
     ガイは宙を見つめた。

    「さすが完全同位体っていうとこか。アッシュの方はルークより年季が入ってる分だけ、意地の張り方にも磨きがかかってるよな。自分の本音を隠すのが上手いし徹底してる。アッシュのためには、あいつを通してルークを見るのは止めた方がいいんだろうがな。ついルークの影を探してしまってる俺たちの視線の意味に気づいていて気づかないフリをしてくれてるのは、あいつなりの優しさなんだろう。……というより」
     苦笑がもれた。
    「アッシュに睨まれるとお前たちまでルークを忘れるのかと、あいつに責められてるような気分になるんだ。俺たちがあいつの中にルークを見るのは構わないが、ルークにしていたようにあいつ自身を構うのは許せないって感じだな。立場が逆転したことで、ルークのマイナス思考がアッシュに移っちまったんじゃないか」
    「──そうね」

     込み上げてきた苦い想いを飲み込むと、ガイは声を落とした。

    「もしもアッシュが、ルークなんか知らない、被験者の自分が助かるので当然だって態度でいたとしたら……俺はあいつを責めたかもしれないな。自分の居場所を奪った偽者だと罵り続けてた、そのレプリカの命を奪い取って生きてる気分はどうなんだと」

     じっさいは、違った。 
     ルークを失ったことで一番深い傷を負っているのはアッシュだ。
     あいつが、俺たちの誰よりもルークの影を追っている。



    「みゅうぅ……」



     いっとき降りた沈黙の中を、気抜けするような声が響いた。


    「? どうしたんだ、ミュウ?」
    「ボク、どうしたらいいか分からないですの」

     気落ちした様子で両耳を垂らしているチーグルに視線を送ると、ティアは困り顔で言った。

    「ミュウはアッシュと一緒にいたいのに、彼が近づけさせないのよ。何度もアタックしているようだけど……結局、最後には追い返されてしまうんですって」
     水色の塊がしゅんと縮こまった。
    「アッシュさんはご主人様じゃないって、アッシュさんに怒られましたの」

     ふと、一つの考えが過ぎって、ガイはミュウに訊ねた。

    「ミュウは、どう思う? ルークはアッシュの中にいると思うのか?」
     キラキラと大きな瞳を輝かせると、笑顔がはじけた。
    「はいですの! ご主人様は帰ってきてるですの!」
    「……え?」
     ティアとガイは顔を見合せた。
     元気よくミュウは答えた。
    「初めはご主人様でしたの。そのあとすぐに、ご主人様はアッシュさんの中に隠れてしまわれたですの」
    「ミュウには分かるの?」

     むんずとミュウを抱き上げるティア。

    「!!! ティアさん! く、くるしいですの……@☆%#」
    「ご、ごめんなさい!」
     我に返ると、締め付けられてくたりとなったミュウを慌てて手放すティア。
     ガイがくすりと笑った。

    「ミュウが言うなら決まりだな。もし、アッシュの中にルークがいて自分の意志で出てこないとしたら、なーんとなくその理由は分かる気がするけどな」
     拳が固く握り締められた。


     ならば、問題はあの馬鹿をどうやって引っぱり出すかだ。
     





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